在日コリアンの ジャパニーズニューシネマ |
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キネマ旬報日本映画ベストテン第1位・監督賞・脚本賞・主演女優賞・新人男優賞をはじめ、日本映画監督賞、毎日映画コンクール日本映画大賞・脚本賞・主演男優賞・主演女優賞などなど、1993年度日本映画の賞を総ナメにした『月はどっちに出ている』― この映画は、従来の在日コリアン観、すなわち差別を受けながらも清く正しく生きる在日コリアンを描いたような、社会派問題作ではなかった。テーマは「いろいろあるけど、どっこい俺たちゃ生きている」、在日コリアンの日常を描いた「放送禁止用語と差別用語が飛び交う痛快娯楽作」なのである。もちろん興行的にも大成功。そして、その放送禁止用語・差別用語は映倫にクレームをつけられ、テレビ放映で問題とされるなどの逆風にあったが、"言い換え"によって差別問題を回避する偽善的な処理が当たり前の日本の映画界に、「表現」という問題に関しても一石を投じたと言える。
「陰惨に描きすぎている」という在日コリアンからの批判の声も多かったが、ひとつの在日コリアンをリアルに描いたすぐれた人間ドラマ、ヒューマンコメディであったからこそ、これほどの評価を受けたのだ。プロデューサーいわく「固定した在日コリアン像を打破したいという思いでつくった映画」とか。そのあたりに、ワンコリアフェスティバルにつながる部分、意志が在るのではないかと感じる。また、よく知られるように『月はどっちに出ている』は、原作から興行まで、在日コリアンを中心にして、つくりあげられた。
監督は崔洋一氏、原作の『タクシードライバー狂躁曲』は作家・梁石日氏、脚本は劇団「新宿梁山泊」の岸田戯曲賞受賞脚本家・鄭義信氏と崔氏、企画・制作・宣伝・配給・興行を仕切ったプロデューサーの李鳳宇氏。『月はどっちに出ている』以外でも映画界で活躍している在日コリアンは多く、「日本映画」をリードしているといっても、過言ではないだろう。
なぜ、今在日コリアンが、不振といわれる日本映画界でパワーを持ちえたのか?そして、何を「表現」しようとしているのか?在日コリアンは、日本映画に、そして日本映画界にどのような"意味"を持っているのかを考えてみる。
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