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「財団法人ワンコリアフェスティバル設立記念シンポジウム」報告

 10月22日、立命館大学=朱雀キャンパス5階大講義室において「財団法人ワンコリアフェスティバル設立記念シンポジウム」が「東アジア共同体の未来に向けて−市民・地域交流を中心に−」をテーマに開かれ、韓国人、日本人、中国人、中国朝鮮族、在日コリアンの専門家による熱い議論が交わされました。
 今回のシンポジウムは、海洋資源やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をめぐる中国、日本、ベトナム、フィリピンなどの対立、日本の福島原発事故による海洋放射能汚染、中国最大の海上油田である渤海湾の海底油田における原油流出など、いま東アジアが緊張と対立を深めつつあるという問題意識のもと、東アジアの情況をより深く掘り下げ、この緊張を緩和し、対立を克服するために「東アジア共同体」と関連する東アジアの未来を、市民の立場から展望しようとの趣旨でもたれました。

                  
               (金ヒジョン・総合司会)
 まず、総合司会・金ヒジョンの開会の挨拶により始められ、続いて開会にあたって、鄭甲寿・財団法人ワンコリアフェスティバル代表理事、勝村誠・立命館大学コリア研究センター長が主催者挨拶をしました。引き続いてコーディネーターの文京洙・立命館大学教授の司会進行により討論が始められました。

      
(鄭甲寿・財団法人ワンコリアフェスティバル代表理事)勝村誠・立命館大学コリア研究センター長)    (文京洙・立命館大学教授)
  最初の発言者である李元範・東西大学教授は、「東アジア共同体」については、韓・日・中とも政治レベルでは総論賛成、各論反対で前に進まないが、民間レベルでは「韓流」「日流」の交流が活発であり、とくに韓国の「日流」の現れとして一般的にはアニメや小説を連想するところだと主張されました。そのうえで、創価学会、天理教などの日本の新興宗教が韓国社会に急速に広まっているという新鮮な事実を指摘し、その社会的背景として核家族化、一人世帯の急増など日本との共通性を挙げたうえで、それは東アジア共通の価値観を基礎とするものであり、社会的課題も共通するとされ、こうした東アジアにおける市民社会の共通性をもとに、消費運動、環境問題などで連帯することから「東アジア共同体」へ接近すべきだと語りました。

           
       (李元範・東西大学教授)           (朴一・大阪市立大学教授)                  (王柯・神戸大学教授)
  二人目の発言者である朴一・大阪市立大学教授は、東アジア認識の共有を図るために、文化・学術交流とともに、とくにインターネットによる交流の重要性を強調しました。また、今日本で賛否両論の激しい政治的イシューとなっているTPPに関して、1997年の「アジア通貨危機」や数年前の「リーマン・ショック」を想起させながら、TPPに日本が入ることの危険性、とくに米の危機に常に巻き込まれることになることを指摘し、「東アジア共同体」を目指すためにも今後中国と建設的相互批判にもとづく関係を構築することが重要だと語りました。その例として原発に対する市民による国境を越えた相互監視も必要だと問題提起しました。
 三人目の発言者である王柯・神戸大学教授は、最近の中国に対する日本の報道があまりに偏っていることに懸念を示され、そこには「東アジア共同体」をめぐる中・日の主導権争いが、東南アジアとの領土、海洋資源の葛藤もからんで関わっていると指摘しました。したがって、「東アジア共同体」の議論以前に、 東アジアには共通認識自体が欠如しているため、共通の知恵、知識、伝統的価値観などを掘り起こし、「 東アジア共同知」を発見または再発見することから始めるべきだと問題提起しました。そのためには、学問の方法も転換する必要があると指摘され、ミクロな分析よりマクロな分析にもとづいて東アジアの共通性を発掘、発見しなければならないと語りました。
 四人目の発言者である勝村誠教授は、東アジア地域内ではかってなく相互依存が深まっており、その中で中国、インドが台頭し東アジア地域における国家間の力関係も大きく変化していると指摘しました。そして、「東アジア共同体」はEUとは違い、地域秩序形成の不断の営みであり、ゆるやかに共同体に向かっていくイメージを共有することが重要だと述べました。また日本が東アジアに向き合う時、歴史認識問題にも正面から向き合い、歴史との理性的で粘り強い国民的な対話を続けていかなければならないと語りました。具体的な例として日韓の学生交流の取り組みをパワーポイントを使って説明しました。

                     
            (勝村誠・立命館大学教授)
 その後、会場からの質問にも答えながら、コメンテーターを交えた討論をしましたが、結論として「東アジア共同体」が現状では実現困難な課題であることを認めるとしても、市民一人一人が政府の情報やマスコミ報道を鵜呑みにせず、国境を越えた多様な、とくに文化、芸術、学術、青年のネットワークを構築しながら意識を高めていくならば、夢から現実へと進むことができるという共通認識に達しました。

  

  

 具体的な行動提起として、さっそく今回集った大学、研究所、研究会等のネットワークを作ることになりました。「東アジア共同体」実現に向けた新たな一歩となるでしょう。  
  この日の議論は、近くまとめて詳しく発表いたしますので、しばらくお待ち下さい。

( 文責 )財団法人ワンコリアフェスティバル代表理事 鄭甲寿

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