竹田青嗣さんと朴元淳さんが語る人間の未来と希望 東アジアにおける市民社会の可能性 開催報告 l 設立に向けて
ワンコリアフェスティバル実行委員会は、去る9月19日、年内設立を予定している財団設立に先立って、「財団法人ワンコリアフェスティバル設立準備シンポジウム」を東京で開きました。 同シンポジウムは、韓国にとどまらずアジアを代表する市民運動家である朴元淳(パク・ウォンスン)さんと、近代市民社会の原理と可能性を探求してきた在日2世の哲学者である早稲田大学教授の竹田青嗣さんをお招きし、「竹田青嗣と朴元淳が語る人間の未来と希望−東アジアにおける市民社会の条件と可能性」をテーマに、同財団の目的や理念、展望に関する議論を深めようともたれたものです。 現代の最高の理論家である竹田青嗣さんと最高の実践家である朴元淳さんとの対論から何が見えてくるか、大きな期待とともに、議論がかみ合うのか不安もありましたが、今回、予想以上の成果があったと考えています。 竹田青嗣さんは「市民が社会全体のデザインを構想する運動は日本には乏しかった。今回朴さんたちの活動を知って、アドボカシ−の運動からソ−シャル・デザインへと持続的な活動を続けてきた韓国は、いまや市民運動の先進国だと再認識でき、多くのインスピレーションを得た」と評価され、朴元淳さんは「竹田先生の人類の歴史発展を踏まえた近代市民社会に対する本質的な捉え直しの議論に共感するとともに、日韓の市民社会を基盤に、具体的な実践活動を通してアジアに成熟した市民社会を広げていきたい」と応じました。 お二人とも非常に刺激的な議論になったと喜んでいただきましたが、これも韓日の社会と歴史に精通し、韓国語も堪能な立命館大学教授の文京洙(ムン・ギョンス)さんのコーディネートのおかげといえます。同シンポジウムの準備においては、文京洙さんとともに今回の企画の当事者でもあり、当日のコメンテーターも務めてくれた、大阪経済法科大学教授の金泰明(キム・テミョン)さんが中心的な役割を担ってくれました。また、朴元淳さんが作られた韓国の市民団体である希望製作所の日本側パートナーである(特活)日本希望製作所の全面的な協力を得ることができ、理事のお一人である塩田三恵子さんがコメンテーターとして発言してくれました。 同シンポジウムの詳しい内容は、近いうちに本の形でまとめたいと思っていますので、ここでは、シンポジウム当日配布資料の一部を掲載させていただきます。 ところで、今回若い人たちがたくさん関ってくれました。今回の後援もしている(特活)コリアNGOセンターは、ちょうど東京事務所を開設したところでしたが、東京事務所の責任者となったばかりの金朋央(キム・プンアン)・前コリア青年連合共同代表が、会場の手配、資料作成など事前の事務的作業を遂行してくれました。そのコリア青年連合の共同代表を引き継いだ李玉蓮(イ・オンニョン) さんも、当日の会場全般を、学生時代ワンコリアフェスティバル東京の副委員長だった宋基央(ソン・キアン)さんとともに受けもってくれました。そのほかにも日本希望製作所のインターン生や現役の高校生もスタッフとして活躍してくれました。また、当日の写真係と膨大なテープ起こしを今年大学を卒業したばかりの金星河(キム・ソンハ)さんが果たしたくれました。まさに、これから「人間の未来と希望」を創りだす当事者といえる若者が、同シンポジウムを支えてくれました。ここに、あらためて感謝します。 同シンポジウムの議論を通して、市民の立場から南北統一と東アジア共同体を構想する「財団法人ワンコリアフェスティバル」の役割がより明確になりました。すなわち、韓日の市民社会の担い手であるNGO・市民団体、地域自治体を具体的につなぎ、グローバルなコリアンネットワークを構築し、多様な議論の場を創出することで、統一と東アジア共同体に向けたメッセージを世界に発信することの重要性が確認できました。
(文責)ワンコリアフェスティバル実行委員長 鄭甲寿
プロフィール
金泰明(キム・テミョン) 在日韓国人政治犯を救援する家族・僑胞の会事務局長(76年〜90年)、在日韓国民主人権協議会共同代表(90年〜95年)を経て、現在、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター教授。 専攻は、人権学(マイノリティの権利論、共生社会論)。著書に『マイノリティの権利と普遍的人権概念の研究』(トランスビュー)、『共生社会のための二つの人権論』(トランスビュー)、『欲望としての他者救済』(NHKブックス)。部分執筆に『はじめての哲学史』(有斐閣)『知識ゼロからの哲学』(幻冬舎)など。