(1997)

壮大な夢に向かって


 心の扉は外側からドン・ドンと叩いて開かせるのではなく、内側から自然に開かせることによって、はじめて互いに融和という許容力が生まれるのだと思う。その意味で「ワンコリア・フェスティバル」はわたしたちの心の扉を内側から開かせるための試みであったが、それが見事に成功した。「ワンコリア・フェスティバル」をたった一人で始めた鄭甲寿という包容力のある優れたオルガナイザーの忍耐強い運動が理解されるようになったといえる。

 「ワンコリア・フェスティバル」が始まって今年で十三年になる。長い時間を必要としたが、これから先のことを考えると、さらに長い時間を必要とするだろう。祖国統一は一つの里程標である。祖国統一というわたしたちの悲願の彼方に、さらなる壮大な夢がひろがっているのだ。その壮大な夢に向かって「ワンコリア・フェスティバル」は今年も確実な一歩を踏みしめて前進しようとしている。あらゆる国家と民族と人種の壁を越えて壮大な夢を実現させるためには、「ワンコリア・フェスティバル」に参加してきた人々、そしてこれから参加するであろう人々の協力が不可欠であり、その夢はわたしたち自身の自己実現をも共有しているのである。


 

梁石日 (やん・そぎる)
1936年大阪生まれ。作家・詩人。1950年代後半より、在日朝鮮人の解放闘争に関わりながら、金時鐘らと同人誌『ヂンダレ』『カリオン』を刊行する。29歳の時に事業に失敗し、ばく大な借金を抱えて大阪を出奔、各地を放浪したのち東京でタクシードライバー運転手を10年務める。著書に、詩集『夢魔の彼方へ』『タクシードライバー日誌』、『狂躁曲』、『族譜の果て』、『夜の河を渡れ』、『夜を賭けて』、『闇の想像力』、『雷鳴』、『Z』等がある。


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