(1997)

ワンコリアの音 天地に響け


 わが民族は喜怒哀楽の感情を、ダイナミックに、ストレートに表現する。笑いと涙が同時に入れ替わる豊かな表現力とヴァイタリティは、人びとの心を揺さぶり、揺り動かす。その民族の素晴らしい宝が調和を乱し、不信と怒りを絶頂に押し上げて、38度線を挟んで五十年近くも睨み合う。かとおもえば、南北離散家族の対面では、抱き合って嬉し涙を豪雨のごとく流す。体制が違っても、喜怒哀楽の表現は変わらない。わたしはそれを民族のリズムと見る。

 ワンコリアの強靭なヴァイタリティも、間違いなく民族のリズムを踏襲している。丑年に始まったワンコリアが干支を一巡して丑年を迎えた。よくぞ迎えた!!!

 十年たてば山河も変わるという韓国のことわざに従えば、ワンコリアも変わった。エンジンはますます回転を速めてパワーアップ、さあ、初志の貫徹か。その不屈の夢が実現する日を見届けたい。

 ワンコリアの動きから、わたしは民族楽器のクェンガリ(クェンメギ)を想起する。円い幅二〇センチほどの小さな金属打楽器のクェンガリは、形(ナリ)は小さいが代表的な民俗芸能の農楽(ノンアク)やシナウィ(巫俗音楽)、さらにサムルノリのリード楽器として、縦横無尽に動き回る。

 形(ナリ)は小さいがワンコリア、汝は民族和合へのクェンガリの役を演じつつある。甲高く、ワンコリアの音、天地に響け!


金両基 (きむ・やんき)
1933年東京生まれ。韓国中央大学客員教授、カリフォルニア・インターナショナル大学教授を経て、87年静岡県立大学教授に就任(在日韓国人初の国公立大専任教授)。
主な著書に『韓国仮面劇の世界』(新人物往来社)、『能面のような日本人』(中公文庫)、『ハングルの世界』『物語 韓国史』(中公親書)、『日韓歴史論争 海峡は越えられるか』(中央公論社)等がある。

 

>>> 次のページ(梁石日氏)へ

もどる

©1985-2001 OneKoreaFestival. tel,fax/06-6717-6645 mail :Webmaster