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1995 第十一回 /東京:上野公園水上音楽堂 大阪:服部緑地野外音楽堂 )

第11回ワンコリアフェスティバルにあたって
 実行委員長 鄭甲寿

  ワンコリアフェスティバルは、去る1985年の「解放四〇年」を機に始められ、以来毎年回を重ね、「解放五〇年」の今年は、第11回を迎えることができました。これまで暖かいご理解、ご賛同をくださった方々、貴重なご協力、ご支援をくださった皆様に、ここに改めて厚く御礼申し上げます。
  さて、「解放四〇年」「解放五〇年」と重ねた年月は、しかし同時に、私達コリアにとって分断の年月でもあります。そもそも当フェスティバルは「解放四〇年」を、統一への歴史の新たな展望を切り開いていく再出発点と捉え、そのために、発想の転換を訴え、未来志向と創造的なアプローチを強調して始められたものでした。以来、一貫してワンコリアの実現を目指し、そのために私達コリア全体の利益のみならず、アジアの平和と発展、ひいては人類の進歩への貢献を志向する、まったく新しい独自な発想のビジョンを掲げてまいりました。それは、在日コリアンこそまずハナ(ひとつ)となってワンコリアのシンボルとなり、祖国南北、海外コリアンの間のパイプ役としてワンコリアの実現に寄与するとともに、究極において「地球市民」に連なる「アジア市民」創出のための「アジア共同体」を展望するものです。「アジア市民」の市民とはいうまでもなく市民社会の主体であり、そして市民社会とは、自由や人権、民主主義などの人類の普遍的価値を追求、さらには実現する社会といえるでしょう。したがって、このビジョンは、こうした未来を切り開く普遍的で積極的、能動的な在日コリアン像を提示するものでもあります。
  当フェスティバルはこのビジョンを具現化する一歩として、祖国南北の共演、総連・民団傘下団体の共演、海外コリアンの出演など、立場や国籍の違いを越えた参加と協力、賛同を得てまいりました。嬉しいことに、ここ数年在日コリアンどうしの和解に向けた動きも活発になっており、日本各地で繰り広げられている二世、三世による新しい形の運動や文化活動の多くも民族統一を志向し、既成の団体との連携、協調も模索するようになってきました。また、既成の団体においても「ワンコリアパレード」(1993年 京都民団・総連)のように、直接合同で行う行事、活動が増えています。ちなみに「阪神大震災」の救援に際しても、京都の総連と民団は共同歩調をとりましたが、それもこのような動きを通して相互の信頼関係が育まれてきたからこそでありましょう。こうした動きはますます活発になることでしょう。当フェスティバルもその一翼を担うとともに、様々な和解の努力に対し、熱いエールを送るものであります。

  ところで、当フェスティバルも「KISS・FM神戸」のハングル情報の放送やチャリティーイベントなどを通して、微力ながら救援活動のお手伝いをさせて頂いておりますが、ここに改めて犠牲となったすべての方々に深く哀悼の意を表しますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

  一方、現在世界は、EU(ヨーロッパ連合)やNAFTA(北米経済機構)、EAEC(東アジア経済協議体)などの地域統合の動きに見られますように、国家単位の秩序から国境を越えた秩序に移行しつつあります。それらは、単なる経済的統合にとどまらず、地域内における市民的権利の、より普遍的な実現という方向に進むものと思われます。
  「アジア共同体」もまた、そのような方向に展望すべきでしょう。すなわち、「アジア共同体」とは、経済的統合とともに、各民族文化の相互尊重と交流、域内の経済格差の縮小から解消、環境問遺や安全保障における協調、そしてなにより、自由や人権、民主主義などの市民的権利のアジアにおける普遍的実現を意味するものであります。「アジア共同体」の実現には、もちろん乗り越えなければならない様々な困難な問題がありますが、その中でも私達コリアと日本には、とくに重要な課題があります。それは、アジアの平和を脅かしているコリアの分断状況の克服と、日本の明治以来の「脱亜入欧」的なアジア観の克服であります。
  日本は、アジアに対する過去の歴史を直視し、アジアとの歴史認識の共有を図ってほしいと思います。それが日本がアジアから信頼される道ではないでしょうか。とりわけ「戦後五〇年」の節目を機に、今後「戦後補償」などの過去の精算に対しても、歴史的な対応を期待したいと思います。  私達コリアンは「朝鮮戦争」の民族相残の悲劇を経験し、幾多の紆余曲折を経ながらも、自主・平和・民族大同団結の三大原則による統一を宣言した「七・四南北共同声明」(1972年)、「南北の不可侵と交流・協力の合意」(1992年)と、統一への貴重な成果を積み重ね、また、世界卓球選手権大会(1991年)における初の南北統一チーム「コリア」参加のように、時に交流が実行されてきたとはいえ、そのような実行が未だ少ないことは事実でありましょう。
  「解放五〇年」、分断半世紀の今日、いまや果敢な実行の時であり、私達在日コリアンも決意を新たにし、南北の対話と交流を一層深め、ワンコリアの実現に向けてさらに努力すべきでありましょう。
  皆さん、ともにワンコリアの未来を切り開いていきましょう。
  ハナ!


 
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