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1994 第十回 / 東京:上野公園水上音楽堂 大阪:服部緑地野外音楽堂 )

ワンコリアフェスティバル10周年を迎えて
 実行委員長 鄭甲寿

  ワンコリアフェスティバルは、1985年の第1回開催以来毎年回を重ね、ここに第10回を迎えることができました。
 これまで暖かいご理解、ご賛同をくださった方々、貴重なご協力、ご支援をくださった皆様に、ここに改めて厚く御礼申し上げます。
  当フェスティバルは、在日同胞こそがまずひとつになってワンコリアのシンボルになり、祖国南北、海外同胞間のパイプ役としてワンコリアの実現に貢献するとともに、究極において世界市民に連なるアジア市民創出のためのアジア共同体を展望する、まったく新しいビジョンを掲げその実現を目指しています。とくに当フェスティバルは、シンポリックなイメージを重視し、そ浸透を通してコリアのイメージアップと統一のための南北対話や交流を支持する国際世論の醸成にすこしでも寄与しようと努めてまいりました。
  またイメージを現実化するために、実際にも祖国南北の共演、総連・民団の共演を実現してきました。嬉しいことにここ数年、在日コリアン同士の和解に向けた交流の動きも活発になってきています。とくに最近では、
 「ワンコリアフェスティバル柏田地域」(1992・1993年 東大阪
 「ワンコリアウリマル教室」(1993年 統一日報
 「ワンコリアライブ」(1993年早稲田大学を中心とするコリア学友会等
 「ワンコリアパレード」(1993年 京都民団、総連共同
 「ワンコリア大阪囲碁大会」
       (1994年 大阪朝鮮囲碁協会、コリア大阪囲碁協会共催
というように使われてきています。
  このように各地での様々な取り組みが統一志向を鮮明にできるワンコリアのイメージで統一的に展開されるならば、日本や祖国に対しても大きなインパクトをもって在日コリアンの肯定的なイメージが広がるでありましょう。当フェスティバルが10年前、在日コリアン、ワンコリア、フェスティバルといった表現を初めて使った時に、多くの反発があったことを思えば昔日の感があります。
  ところで表現は英語であっても、在日における統一志向のイメージが広がり、定看するならば、母国語による表現も広がりやすくなる効果があります。事実、当フェスティバルでもワンコリアのイメージを常に母国語では「ハナ」(ひとつ)と表現してきましたが、このイメージも浸透しつつあります。

  ヴィジョンのもうひとつの重点は、ワンコリアのシンボルとして在日コリアンから世界の中のワンコリアのイメージを発信し続けることであります。すなわちワンコリアは我が民族全体の利益であるばかりでなく、日本や中国及びアメリカ、ロシアなど周辺諸国にとっても利益であること、さらにアジアの平和と発展、ひいては人類の進歩への頁献となるということを、具体的、現実的にシミュレーションしていくということであります。
  21世紀はアジアの時代と言われています。特に東アジアが牽引者の役割を担いつつあります。そうした東アジアに位置するワンコリアとしてヴィジョンを構想していくべきでありましょう。
  今、世界は日・米・欧の三極構造から中国を加えた四極構造へと移行しつつあります。冷戦時代の東西対立に代わって新たに複雑な地域間の対立が生まれようとしています。しかし一方で、経済や環境問題のグローバル化によって、相互依存も深まり、協調の模索も余儀なくされるでありましょう。その意味でEU(ヨーロッパ連合)、NAFTA(北米経済機構)、EAEC(東アジア経済協議体)、APEC(アジア太平洋経済協力会議)等の動向に注目する必要があります。中でも先日「ASEAN」6ケ国に、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーを加えた10ケ国が「東南アジア共同体」構想を発表したことは画期的なことであります。それは北東アジアにとっても良い刺激となるでしょう。
  まさに、当フェスティバルはこうした動向をふまえ、しかも人類の普遍的価値を追求するヴィジョンとして、アジア共同体の理念を掲げているのであります。それは、アジアの経済的統合とともに、地域間の経済格差の縮小から解消、環境問題や安全保障における協調、そして自由や人権等の市民的権利のアジアにおける普遍的実現を目指すものであります。
  そしてこうしたヴィジョンを実現する前提として、私たちはかねてより二つの課題を指摘してまいりました。一つは、私たちのコリアが何より分断状況を克服する努力を最優先するべきだということであり、いま一つは、日本がその経済力にふさわしいリーダーシップを発揮するためにも「脱亜入欧」的なアジア観を克服してほしいということであります。この点で昨年、細川首相が先の戦争は「侵略戦争である」と明言したこと、さらに村山新政権の五十嵐官房長官が、日本の戦後補償がドイツに較べ非常に不十分であると認め、補償に向けて前向きな見解を示されたことは画期的であり、今後必ず実現してほしいと思います。合わせアジア諸国との未来志向的な歴史認識の共有が可能となるような歴史教育を期待したいと思います。

  一方、祖国南北においても、さまざまな紆余曲折の中で少しずつ統一につながる成果が実を結んできました。当フェスティバルの歩みと重ねてみても1984年の韓国の水害に対する共和国の物資援助とその後の対話機運の盛り上がり、1985年の離散家族相互訪問と芸術団相互公演の実現、1989年の韓国実業家の共和国訪問、1991年の世界卓球選手権大会(日本・千葉)における初の南北統一チーム「コリア」の参加と総連・民団共同応援の実現、さらに同年末、南北の「不可侵と交流、協力合意書」と「非核化共同宣言」の発表と続いてきました。
  このような流れの中で、本年遂に金日成主席と金泳三大統領との南北首脳会談の開催が決定しました。その実現を目前にしての金主席の突然の死は全同胞に大きな衝撃を与えました。現在、やむをえず中断していますが、統一のために、一日も早く南北首脳会談が開かれるよう望んでやみません。これまでも幾多の緊張化と中断を繰り返しながらも南北関係は進展してきたのであり、たとえば昨今の「核査察」問題の渦中においても南北間の直接貿易は増加しているという事実を看過すべきではないでしょう。

  当フェスティバルは、過ぐる10年の成果を大切にするとともに、この度の10周年を飛躍の年と位置づけました。と同時に来年の民族解放50周年をより意義深く迎えるための催しとしたいと考えています。そのために今年は大阪だけでなく、はじめて東京でも開催することとなりました。大阪はアジアの玄関にふさわしく、在日コリアンのもっとも多い地域であり、したがって当フェスティバルのシンボル性をアピールするのに適しています。そして、東京は、当フェスティバルのヴィジョンを日本全国に発信し、今後世界に広げるために最適の地であります。
  さらにこうした今後の発展とその基盤づくりにも力を入れたいと考え「ワンコリア財団」の設立を目指します。同財団は、当フェスティバルの拡大発展とともに、統一が実現すれば、記念モニュメントの祖国での建立、アジアの平和や文化の向上に貢献した人士を顕彰する「アジア平和賞」設定、「アジア文化センター」設立などを目的とします。
  当フェスティバルは今後とも、ワンコリアの実現に向けて決意も新たに歩んでいく所存でございます。
  皆様の一層のご支援、ご協力を心よりお願い申し上げます。皆さん、ともにワンコリアの未来を切り開いてゆきましょう。
  ハナ!


 
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