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1990 第六回 /大阪城野外音楽堂 )

ワンコリア・アジア・世界
        実行委員長 鄭甲寿

  1985年の解放40周年を機に始めましたパリロ民族・未来・創造フェスティバルは、今年第6回目を迎えるに当たって、さらなる発展を期すべく名称をワンコリアフェスティバルと改めました
  当フェスティバルは、解放40周年を未来への新たな出発点として捉え、必ずや達成されるべきワンコリアを目指して始められました。そして、何より、ワンコリアヘのヴィジョンを提言してきました。
 私達の提言するワンコリアへのヴィジョンは、従来のように統一祖国を在日同胞のバックグランド(援護基地)と考えるばかりでなく、在日同胞を含む海外同胞もまた、統一過程においても、統一後においても、祖国のバックグランドとなり得ると捉える全く新しい発想のヴィジョンであります。すなわち、祖国と海外同胞とは、互いが互いのバックグランドの関係にあると考えるものであります。したがってそれは、海外同胞の存在を積極的、能動的に捉え、その役割を決定的に重視するものであります。
  海外同胞の最大の特徴は、世界にまたがるその広範な居住地を反映して、実に多様であるということであります。国際社会の利害と相互関係がますます複雑になっている今日、そうした海外同胞の多様性は、今まで以上に祖国の統一と繁栄に大きく寄与できるでありましょう。たとえば最近も、ソ連のハバロフスクにおける南北の合弁による製薬会社設立が報道されていましたが、南北を仲介したのも海外同胞である朝鮮系ソ連人の会社経営者でありました。こうした事例は、まさに私達のヴィジョンの方向と一致するものであります。
  しかし、そうした役割と寄与も、海外同胞が団結してこそ一層有効に果し得るのであります。そのためには海外同胞が結集し、団結しうるシンボルが必要であります。
  私達は、在日同胞こそそのシンボルとなるべきだと訴えてきました。何故なら在日同胞は、他の海外同胞とは異なり、祖国南北の対立をもっとも鋭く反映していると同時に、にもかかわらず祖国のように物理的な〔38度線〕は存在しないという、特別な条件のもとに置かれているからであります。私達は、この条件をむしろ積極的に活用し、在日同胞こそまず一つになるべきであり、そのことによって統一へのシンボルとなるべきだと訴えてきた次第であります。そうしてこそ祖国と海外の同胞からも尊敬と信頼を得られるからであります。

  当フェスティバルは、こうした考えを具体的に実証するために、何より全ての同胞間のパイプ役でありたいと願い、あらゆる同胞が、その立場や考え方、所属や国籍の違いを超え、実際に一堂に会する場を創造するために開催するものであります。そのために批判せず代弁せず、また反対せず迎合せずという姿勢を貫いてきました。とはいえ私達は、2004年に〔38度線〕において万国博覧会を開催しようと提案するなど、建設的な提案と独創的なアイデアをもって統一に積極的に関わろうとするものであります。
  幸い、こうした私達の発想とヴィジョンは、多くの方々の支持と賛同を得ることができ、立場や所属の違いを超えて、実際に大きな成果を収めてきました。こうした成果を土台に、当フェスティバルがさらに発展していけるよう、ここに改めて皆さんの御支援、御指導を仰ぎたいと存じます。

  ところで、ワンコリアのヴィジョンは、わが民族の利益のみを考える狭い理想ではありません。
  今日人類の前には、平和と人権、地球環境の危機とエネルギー問題、富める国と貧しき国の益々広がる格差など、人類共通の課題が横たわっています。しかしながら、歴史を大きな流れとして見るならば、世界は緊張緩和と平和共存に向けて徐々に動いているように思われます。
  これからの世界の進行方向を表すキーワードは、当面リベラル、グローバル、ヒューマニズムに集約されると思われますが、その具現として、ソ連をはじめとする東欧の変革、あるいはヨーロッパのEC統合やアメリカを中心とした北米経済圏など、国境を越えた地域経済圏の形成が進んでいます。
  一方アジアでは、そうした動きが著しくおくれてしいます。とはいえ、最近そうした動きへの芽も、わずかながらアジア、太平洋圏において見られることも事実でありましょう。
  しかし、アジア経済圏さらにアジア共同体を展望する時、その最大の障碍が、わが祖国を分断する〔38度線〕であることは言うまでもありません。何故ならば、一触即発の火薬庫としての〔38度線〕がある限りこの地に平和と安定はありえず、そのために「アジア共同体」構想は実現し難いからであります。であるならば、周辺諸国にとっても、ワンコリアこそ各国の利益と認識される時が必ずや来ることでありましょう。
  ひるがえって当事者として言うならば、わが民族は、〔38度線〕を撤廃して統一を達成し、自己統治能力を国際社会に証明するとともに、アジア共同体への展望を主体的に切り開くべきであります。
  もちろんアジア経済圏を考えるならば、日本の役割がきわめて重要であります。したがって、わが民族と日本とのあるべきパートナーシップも、アジア全体の中でそれぞれの役割が模索されるべきでありましょう。
  とくにわが民族は、日本と他のアジア諸国とのパイプ役ともなれるでありましょう。もちろんそのためには、日本自らのアジア諸国に対する明快な過去の清算が必要でありますが、それは、アジアとの未来志向的な関係を創り出す上で欠くことのできない前提条件であります。すなわち、日本はその自浄能力が問われているといえます。日本の近代史における自浄能力の発揮は、アジア各国の信頼を得るためにも、世界の尊敬を得るためにも、かならず必要なものだと思います。アジア各国の信頼なくして「アジア共同体」の成功はありえません。
  アジアにおいて、わが民族が自己統治能力を、日本が自浄能力を発揮する時、アジアは一つになることができるでありましょう。 そのことによって、世界と人類の大きな課題にアジアとして輝かしい貢献ができるでありましょう。

  さて、昨年1989年は、世界にとって激動の年でした。とくにドイツ分断の象徴であった〔ベルリンの壁〕が崩壊したことは、わが民族に大きな感動を与えました。現実にドイツが統一されようとしている今日、アジアにおいては、わが民族の統一問題がにわかにクローズアップされています。
  こうした中で先日、解放後初めて南北首相会談の開催に南北が合意しました。今後もなお紆余曲折はありましょうが、私達は、南北首相会談の成功を願い、見守ってゆくものであります。
  まさにこのような時に、祖国南北ならびに在日、在中の同胞がワンコリアのため一堂に会し、心を一つにして共演することは、南北の交流と統一に向けて画期的な意義を有するものと信じます。
  当フェスティバルは、皆さんとともに創るものであり、発展させてゆくものであります。
  皆さん、ともにワンコリアの歴史を切り開いてゆきましょう。
  ハナ!


 
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