( 1989 第五回 /大阪城野外音楽堂 )
「新しい発想とヴィジョンのもとに」
パリロフェスティバル実行委員会委員長 鄭甲寿
パリロフェスティバルは今年5周年を迎えました。5周年も通過点にすぎないものではありますが、やはり一つの区切りを画す感慨があります。この5年間、いかに多くの方々の励ましと御支接によってパリロフェスティバルが支えられてきたことか、今あらためて思い返しています。幸いにも、パリロフェスティバルに対する賛同と共感の輪が、同胞はもちろんのこと、日本の方々にも年々広がり、着実に発展することができました。ここにあらためて御賛同、御支援ならびに御指導、御鞭撻いただいた全ての方々に心からの感謝を申し上げます。
この間、私たちは一貫してワンコリアを志向してきました。それはわが民族が国際社会において真に尊敬される為には、やはり一つにならねばならないと痛切に想うからであります。周知のように、東西ドイツの場合と異なり、わが民族の統一は、カイロ宣言以来誰も反対し得ない国際公約であります。にもかかわらず、わが民族は未だに統一できずにいます。であるならば、国際社会からわが民族の自己統治能力を疑われたとしても、やむを得ないではありませんか。確かに東西冷戦による国際政治の厳しい現実、とくに米・ソなど大国の利害のはざまにあるという困難はありましょう。しかし、だからこそむしろ南北の政策能力、わが民族の知恵が切実に求められるはずです。
皆さん、解放以来40数年、本当になぜ私達は未だ一つになれないのでしょうか。わが民族が統一への熱情においていささかも足りるところはなく、その為に払ってきた犠牲、流してきた血もおびただしいものがあることは言うまでもありません。それにもかかわらず統一できないということは、わが民族に叡智が足りず、統一する能力が欠けているということなのでしょうか。
今や私達はこのことを真剣に考えるべきでありますよくわが民族を評して、自己主張が強い民族だとか、その為にまとまりにくい、団結するのが難しい民族だとかいわれます。確かにわが民族は自己主張が強いでしょう。しかし、そうした強い我がなければ、あの大陸の片隅で、おそらく滅びていたことでしょう。見方を変えれば、それは強い個性をもっているということであり、また正義感が強いということでもあります。素晴らしいことではありませんか。こうした個性の強さと正義感は、わが民旅の美質として受け継ぐべきであります。
しかし、今や統一が一方の自己主張のみによっては成し遂げられない以上、また今日の国際社会の利害が非常に複雑である以上、さらにしたたかに正義と現実とのバランスも考えねばならないでしよう。
とはいえ、あくまでも統一は正義であります。なぜ統一するのか。それは南北、海外同胞が同じ民族だからであります。この原点に立つ他統一は不可能であります。南北がこうした原点をふまえ、謙虚に民族の一員として合意点を求め、それを広げてゆくならば、また国際政治の現実と世界の流れを冷静に見ながら、利害を有する周辺諸国にも、統一こそ利益であることを共同歩調をもって説くならば、統一は可能であります。
ー方、今日人類の前には、平和と人権、地球環境の危機とエネルギー問題など、人類共通の課題が横たわっています。歴史の過程は複雑でありますが、大きな流れとして見れば、緊張緩和と平和共存、さらにはヨーロッパECに見られるように、統合へとさえ進んでいるように思われます。ましてこうしたなかで、わが民旗が同じ民族でありながら統一できずにいるならば、どうして国際社会の尊敬と信頼を得られるでしょうか。どうして人類共通の課題に立派に貢献できるでしょうか。世界の平和と人類社会の発展に貢献するためにも、わが民族は必ず一つにならなければなりません。
パリロフェスティバルはその為に、とくに在日同胞の役割と寄与を重視しています。「私達はワンコリアヘのヴイジョンを提言します」において明らかにしましたように、私達は在日同胞こそまず一つになるべきであり、そのことによって統一へのシンボルになるべきだと訴えてきました。そうしてこそ祖国と海外同胞からも尊敬と信頼を得られ、また日本社会を含め、国際社会においても大きな存在として認められるのであります。私達はこうした考えを具体的に実証する為に、あらゆる同胞が、その立場や考え片、所属や国籍の違いを越えて、実際に一堂に会する場を創造すべく努めてきました。もちろん在日同胞も一つになることは容易ではありません。むしろ、在日同胞は南北いずれか支持の対立ばかりではなく、世代間の対立、国籍の問題等、一つになることを阻む複雑な問越や要因もかかえています。しかし、だからこそ新しい発想とヴィジョンが切実に求められるのであります。40年間できなかったことを実現するためには、これまでの論理と発想を越えなければならないはずです。
私達は発想の転換を訴えます。
私達は、統一における海外同胞の役割を決定的に重要なものと考えます。海外同胞の存在を、受け身ではなく積極的、能動的に捉えます。
海外同胞の多様性を最大限に重視します。すなわちルーツを同じくするものが、少しでも同胞社会の発展と、祖国の統一に寄与するならば、国籍や所属、立場や考え方の違いをいっさい問いません。例えば、今回主旨文にも取り上げた、韓国現代グループ名誉会長・鄭周永氏の共和国訪問の仲介役をした在日実業家も「帰化」されている方です。しかし現実にわが民族に大きく寄与しているのでありますし日本国籍であっても、コリアがルーツであり、祖国であることにかわりはありません。その点では、華僑のように居住他の国籍を有しながら、祖国・中国に貢献しているような生き方も参考にしてよいのではないでしょうか。
私達が度量を大きく持ち、いかなる立場・考えの相手であれ、その主張を聞き、自己の主張も語り、常に共通点・接点を求めるようにするならば、私達はきっと一つになることができます。
パリロフェスティバルは、今後もこのような姿勢を貫きます。立場や考え方、所属や国籍の違う様々な人々からの賛同や共感、協力や支援を大切にするとともに、さらにそれを拡大発展させていきたいと願っています。
どうか皆さん、パリロフェティバルを長い目で、皆さんの手で大きくお育て下さるようお願いしますワンコリアのシンボルとなるような、海外同胞の素晴らしいフェスティバルを共に創ろうではありませんか。
ともに知恵を出しあい、さらに輝かしい未来のヴィジョンを創造しましよう。
共にワンコリアを創っていきましよう。 ハナ!
|