( 1986 第二回 /大阪城野外音楽堂)
「8・15」41民族・未来・創造フェスティバル開催に関して
昨年私達は、わが民族の解放40周年を迎えるにあたって、民族統一への新たな展望を見いだすべく「8・15」40民族・未来・創造フェスティバルを持ちました。それは、民族統一に向けて未来を志向し、歴史を創造しようとする在日二世の思いによって持たれたものであります。とくに未来を担うべき若い世代が民族に目を向け、統一をより身近に感じられるような、在日同胞の生活に即した統一のヴィジョンの必要を提案しました。
また、若い世代の多様化に対応して、様々なジャンルで活躍している在日同胞の音楽家、芸術家による多彩な催しをくりひろげました。
一方、私たちは、祖国における南北対話の機運を積極的にとらえ、対話支持、対話の推進を強くアピールしました。
複雑な国際情勢の中で、わが民族が叡知をもって統一への大道を切り開くためには、真しな対話と、それにもとづく民族の大同団結が不可欠でありましょう。そのために私たちは、海外同胞を含む民衆レベルへの対話の広がりを望みます。その意味で、昨年離散家族の相互訪問と芸術団の相互公演が実現したことは、対話拡大への第一歩となった大きな成果として、私たちの歓迎するところであり、それがより広範な対話、交流へとつながることを求めるものであります。
「8・15」フェスティバルは、統一への大きな方向の中で、在日同胞の多様性を活かそうとする新しい試みであります。このフェスティバルの新しい試みを継続するために、本年も「8・15」41周年を迎えるにあたって、ONE・KOREAのテーマのもとに「8・15」41民族・未来・創造フェスティバルを開催したいとおもいます。
同フェスティバルの開催に向けて、各界各位ならびに各団体のご支援、ご協力を心からお願いする次第であります。
「8・15」フェスティバル実行委員会あいさつ
ならびに統一ヴィジョンについて
昨年私たちは、「8・15」40周年を機に、対立から対話、分断から統一への歴史の新たな展開を見い出そうと、「8・15」40民族・未来・創造フェスティバルを開催しました。とくに、在日と祖国をともに視野に入れた、在日にとっての新しい統一への関わりを展望する、統一のヴィジョンを提案しました。統一ヴィジョンについては後にふたたびふれたいと思いますが、ともかくも、私たちの未来を志向する創造的な姿勢に多くの共感と期待が寄せられました。そうした共感を胸に刻みながら、昨年の提議を契機として今後統一ヴィジョンが、在日同胞全体の課題として論議され、探められるよう努力してゆきたいと思います。
また「分衆の時代」「個性の時代」といわれる若い世代の多様化に対応し、民族音楽や民族舞踊をはじめ、歌曲、ジャズ、ロック、シャンソン、あるいは演劇、ファッションショー、パフォーマンス、さらには美術工芸品展示など、実に様々なジャンルにわたって多彩な催しをくり広げました。それらはまた、在日二世三世に押しつけられ固定化されている民族イメージを超え、明るく大胆に私達自身の民族イメージを創造しようとするものでした。
今年は、金成亀さん、黄佑哲さん、洪栄雄さんたちが、「8・15」フェスティバルのために「民族・未来・創造」のテーマにふさわしく新曲を創作し、聞かせてくれます。私たちは、こうした出演者との共感にもとづく、それぞれの表現活動を通じた創造の輪が、さらに広がることを願っています。
一方、私たちは、祖国における南北対話の機運を積極的にとらえ、対話支持、対話推進を強く求めるアピールを朗読し、南北両赤十字社に送りました。それは、複雑な国際情勢の中で、誠実な南北対話のみが緊張緩和をもたらし、ひいては統一につながるとの思いからなされました。その意味で、昨年、南北の離散家族の相互訪問、芸術団の相互公演が、解放後40年目にしてはじめて実現したことは、わが民族にとって大きな前進であり、私たちは、それがより広範な対話・交流へとつながることを求めてやみません。
このような時に、在日にあっても昨年「8・15」フェスティバルが多くの民族団体からの、考えや立場のちがいを超えた様々な協力によって実現したことは、在日同胞の今後に向けて大きな意義があるものと確信いたします。私たちは、若輩の私たちの呼びかけに応えて下さった各団体のご協力に深く感謝するとともに、今後とも一層のご理解、ご協力を心からお願いするものであります。
次に統一ヴィジョンにも若干ふれたいと思います。
統一ヴィジョンにおける基本的な考え方は、昨年のパンフレットで明らかにしていますように、在日同胞の生活を向上させ、民族差別をなくし、諸権利を獲得する在日同胞の運動にとって、統一祖国が強力なバックグランド(援護基地)になり得るというものです。在日における定住化をふまえた上で、在日同胞の生活意識に則して、新しい統一ヴィジョンを創り出すためには、こうした発想が求められていると考えます。
ところで、昨年は参照することができませんでしたが、『神祭川県内在住外国人実態調査報告書』という注目すべき報告書が昨年神奈川県行政の手でまとめられています。ご承知の方も多いと思います。その中で各方面でとくに注目されたのは、「将来の希望」の項における次のような回答結果であります。
より詳しい分析は、「8・15」フェスティバルの場に譲るとして、ともかく回答の中で「日本で民族的誇り持ち生活」が37.4%ともっとも多く、このことは在日の将来を考える上で重要な指標といえるでしょう。しかし一方で、年齢別では、20〜24歳の若い世代が当該項目については、30.4%ともっとも低い比率であり、また、「日本国籍を取るかもしれない」と「−取りたい」を合せれば52.2%と半分以上を占め、他の年齢層よりかなり高いことも看過しえません。が、「−取りたい」が年齢別では45〜49に次いで二番日の比率であるのに対し、「−取るかもしれない」は年齢別では一番多く、このことは、この層がとくに揺れ動いていることを示しているのかもしれません。それだけに、やはり若い世代への思いきった柔軟なアプローチが切実に求められているといえるでしょう。「8・15」フェスティバルもその一端を担うべく頑張りたいと思います。
統一ヴィジョンは、こうした在日同胞の意識を十分に考慮するとともに、民族的に積極的な意識の面をより顕在化し、拡大しうるような方向で提示されるべきでしょう。この点と昨年のパンフレットに寄せられた文京沫氏のメッセージにおける「求められているのは分断40年の南北双方の生活意識の変化をふまえたより現実的なヴィジョンである」。「統一」とは、たぶん現在では、単なる一体化ではなく、それなりに異質な生活意識の共生を前提とせざるをえないはずである」という指摘を併せ考えれば、次のようなイメージを描きうるのではないでしょうか。
すなわち、統一祖国が、南・北・在日(海外同胞)の多様性をむしろ積極的に活かし、文化的にも経済的にも豊かになり、自立した平和な国として発展するならば、当然在日同胞の民族的誇りは高まり、祖国との自由往来も容易になることによって相互交流、相互理解が深まり、在日同胞は日本にあって祖国に貢献することができ、と同時に国際人として日本社会にも、国際社会にも貢献する、より豊かな可能性を開くであろうと。
そのためには、一方で、人権における内外人平等の原則が国際潮流となっている中で、日本におけるこの原則の実現のためには何より在日同胞が主体的に運動を進めるとともに、他方では、民族間、国家間の国際的平等を求める国際潮流をも考慮し、わが祖国と日本との対等・平等な関係を創出できる統一祖国を展望すべきであると考えます。私たちの問題は、この二つの国際潮流をともに結びつけて考える時、解決の道がより明らかになるものと思われます。より具体的には、統一祖国と日本との二国間条約によって、在日同胞の地位を内外人平等の原則によって保障し、その保障および祖国の海外同胞に対する外交的保護の権利と義務を活用して、平等の原則を真に実現する運動を在日同胞自らが広範に、統一的に力強く推し進め、一日も早く在日同胞の民族差別からの解放をかち取るべきでしょう。
以上きわめて不十分な言及ながら、今回も、統一ヴィジョンは今後さらに堀り下げられ、豊かにされる必要があることを提唱して締め括りたいと思います。
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