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1985 第一回 /大阪城野外音楽堂・太陽の広場)

「8・15」40民族・未来・創造フェスティバル開催に関して

  今年、わが民族は「8・15」40周年を迎えます。
  40年前、全民族をあげて解放の歓喜にわきたったのもつかの間、東西冷戦下の厳しい国際情勢のもと、わが民族の意志に反して分断を強いられました。まさに「8・15」40周年は分断の40年であります。
  私たちは「8・15」40周年を迎えるにあたって、対立から対話、分断から統一への歴史の新たな展望を、いきいきとした想像力と積極的な未来創造の姿勢で見い出すべく、これまでにない斬新な発想で「8・15」40民族・未来・創造フェスティバルをもとうとするものであります。とくに21世紀を担うべき若い世代が民族に目を向け、統一をより身近に感じられるよう、ユニークな統一のヴィジョン創りを柱にロングティーチインをもつ考えであります。と同時に「民族・未来・創造」のテーマにもとづく音楽・舞踊・映像・劇・ファッションショー・製品展示会など、様々なジャンル、分野にわたって、民族のあるべき姿を基本にした未来志向の創造的な催しを出しあえる場にしたいと思っております。

  これまで統一を語るとき、往々にして政治的にのみ論じられ、具体的な生活との結びつき、そのなかから考える関わり方が希薄であったように思われます。
  私たちは、在日における生活と統一との関わりを考える上で、在日同胞の置かれている差別的状況を変える運動にとって、統一祖国がバックボーン(援護基地)たりうるあり方を、具体的に示す視点が重要であると考えます。もはや分断されて40年、いまや他に対する批判や反対より、統一のヴィジョンを生活に即して具体的に描き提示する、主体的な創造によって未来をきり開くべき時期に至っていると信じます。

  一方、昨年9月、韓国の水害に村し共和国の援助物資が届けられ、これを南北を問わずわが民族が歓迎したことは、わが民族に希望をもたらす画期的な出来事でありました。周知のようにその後、急速に南北の対話機運が盛り上がりました。現在の姿勢には、1972年の7・4南北共同声明が発表された当時の歴史的背景を想起させるものがあります。7・4南北共同声明は、自主・平和・民族大同団結の統一のための三大原則を示しました。しかし、三大原則による統一を実現するためには広範な民衆の参加が不可欠であり、今日、わたしたち民衆の側から三大原則を生きた統一のヴィジョンたらしめる、具体的な行動が求められています。
  その意味で、昨年来の南北対話が現在中断しているとはいえ、今後の動きを見守るだけではなくむしろ海外にあるわたしたちが、南北対話が実りあるものになるよう積極的に提言していくべきでありましょう。また民族内部の条件においても、国際情勢においても、これにわが民族が同族の立場を堅持し、叡智をもって対応するならば、南北対話が実を結ぶ可能性は、かってなくあるのではないでしょうか。

  このような時に統一へのヴィジョンを柱としたフェスティバルをもち、南北・海外同胞に未来の展望を提示し、南北対話の推進を提言する意義は、まことに大きいものがあると確信いたします。
  同フェスティバルの開催に向けて、各界各位ならびに各団体の御支援、御協力を心から要請する次第であります。

 

統一ヴィジョンを呈示するにあたって
(「8・15」フェスティバル事務局)

  統一ヴィジョンは、あるべき統一祖国を展望し、統一を志向する根拠を在日同胞の生活に則して語ろうとするものであります。
  統一祖国を展望する場合、まず念頭におくべきは、現在の南北の分断と対立がわが民族に何の利益ももたらさないという平凡な事実であります。
  南北の対立状態は、双方に膨大な軍事的負担をもたらし、経済の発展と全般的な生活の向上をいちじるしく阻害しています。膨大な軍事的負担が南北の分断と対立に起因する以上、分断を克服した統一祖国において、軍事的負担が極度に軽減されることは日を見るより明らかです。軍事部門に費やされるわが民族の有する有能な人材と貴重な物的資源は、統一祖国の平和的経済建設にむけられ、そのことによって全般的な生活の向上が可能となるでありましょう。また、分断状態の困難の中でもなしとげられた双方の経済発展の成果を相互補完的に活かすことによって、さらに飛躍的な発展が可能となるでしょう。このように統一祖国がわが民族にもたらす利益ははかりしれないといえます。しかし、統一祖国はわが民族のみの利益にとどまらないでしょう。
  現在、わが祖国をとりまく米国、日本、中国、ソ連などの各国は、その国益からデタントを追求し、わが祖国の安定を望んでいるといえるでしょう。しかし、分断の状況はわが祖国に確固たる安定をもたらしえません。したがって、わが祖国において平和的統一により恒久的平和が確立され、不安定な状況が根本的に解消されることは、周辺諸国の利害とも決して矛盾するものではありません。
  また、祖国が統一され、恒久的平和が樹立されるなら、アジアの平和、ひいては、世界の平和に貢献することになるでしょう。と同時に、国際社会における発言力、影響力も大きく高まるでしょう。
  こうした統一祖国は、私たち在日同胞にとって、また差別をなくし、権利を獲得する在日同胞の運動にとって、強力なバックグラウンド(援護基地)となるでしょう。
  解放後40年を経た今日なお日本社会の民族差別と偏見は依然として根強いものがあります。もとより民族差別は、意識および感性において差別と偏見が払拭されなくては、根本的に解決されたとはいえません。しかし、その前提として、行政が差別を許さない姿勢と方向で、法的、制度的問題を含めて対処するかどうかも大きな問題であります。
  たとえば、イギリスやフランスなどヨーロッパにおける人種差別にも根強いものがありますが、すくなくとも行政は、それをなくす方向で努力しているといえます。イギリスでは1965年、人種差別を禁止する(刑罰をともなう)人種関係法を制定して以来、人種差別に関する法を実効あるものにするために、1968年、1976年と法的、制度的改善を政府・行政自らが進めています。
  これに比べ日本政府は、行政的に、民族差別をなくす努力を自ら進んで決してしたことはありません。ある日本入管体制の研究者は、日本政府・行政は「黒船」すなわち、外圧なくして外国人の処遇を若干でも改善したことはないと指摘しています。最近の例では、国際世論に押されての国際人権規約の批准、難民条約の批准にともなう入管令の改訂、社会保障三法からの国籍要件廃止が挙げられます。先の研究者は、こうした事態を「黒船待望説」と名づけていますが、今後はこうした国際的圧力も当面望めないでしょう。在日同胞にとって、いまや「黒船待望説」は統一の展望へと発展すべきでしょう。すなわち統一組国と日本との二国間条約による在日同胞の地位問題の解決をも展望すべきでしょう。それは、日本における差別徹廃と権利獲得の運動にとって、決定的に有利な局面を切り開くでありましょう。
  ところで、こうした展望を考慮する時、たとえば、フランスとアルジェリア間の条約である1962年に結ばれたエヴィアン協定が参考に値するでしょう。同協定がフランスに居住するアルジェリア国民に、政治的権利を除き、フランス国民と同様の権利を保障していることは、私たちにとっても示唆に富むものがあります。とくに、周知のように、フランスとアルジェリアが、かつてのわが民族と日本のように、かつて宗主団と植民地であったことを想起するならば、アルジェリア独立後のエヴィアン協定がもつ意味は、一層重要なものになるといえるでしょう。
  それは、社会体制の如何を越えた国際的平等を求める現代の国際的潮流を示しているといえるでしょう。
  統一祖国のヴィジョンは、わが祖国と日本との歴史的関係をふまえ、一方で現代の国際潮流を考慮し、一方で在日同胞の生活に則して、今後さらに掘り下げられ、豊かにされる必要があります。

 
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