永 井 豪 氏
「デビルマン」「マジンガーZ」をはじめとした漫画家の永井豪氏のアニメーション作品は、日本のみならず、イタリアやスペインなどの海外でも大人気なのは良く知られていることである ―
― 永井豪氏のマンガという表現は、なぜゆえにインターナショナルなものになり得たのか?軽々と国境を越えることができたのだろうか?
分断された世界を文化によってつなげることが目的のひとつてあるワンコリアフェスティバルと永井豪氏の接点は、そこにあると思う。永井氏も今回から、ワンコリアフェスティバルに賛同してくれることになった。そこで、ワンコリアへの賛同のメッセージと、氏のワン・ワールドへの願いを語ってもらった。文化のパワーが創る
ワン・ワールドを願って
::::::..../.::::::/.....::::::/.....:::::/.「コリアの人々と、そしてアジアの人々と、文化を通して理解し合おう」という鄭甲寿さんの提言に、私は素直に共感を抱きました。鄭さんのおっしゃるように、絵画、音楽、スポーツなどの文化的なものには、人種、国籍、イデオロギーを越えた普遍性があると思うからです。
アジアの人々と身近につきあって学んだこと私たちが住む国の隣に位置する朝鮮半島が二つの国に分断され、親戚や家族同士でさえ交流を持つことが難しいという現状に心を痛めています。ましてやその遠因が、かつての日本の政策にあったことを思うと、例えそれが私の生まれる以前の出来事だったとしても、日本人の一人として、朝鮮半島に住む人々と朝鮮半島出身の方々への申し訳なさで、胸が詰まります。
私個人としてコリアとの関係を考えるとき、先ず身近なところで「在日」という形で日本に住んでいらっしゃる方々のことを思います。かつて、日本に不幸な形で移住させられてから現在まで、祖国への熱い想いと誇りを抱き続けてこられた方たちに、いつも深い感銘を覚えています。
それから、数年前に済州島と釜山を旅行した時の楽しい日々を思い出します。観光の途中、大雨に遭った妻と私のために、わざわざ傘を持って探しに来てくれたタクシーの運転手さん、私が朝鮮人参が大好きだということを知り、早起きして市場で買い、ホテルまで届けてくれた友人の叔母さん、コリアの伝統料理の説明と食べ方を優しく教えてくれたレストランのお嬢さんを初めとして、実に多くの方たちから親切にしていただきました。
私の仕事場の近辺には、たくさんのコリアン留学生が住んでいます。昼間は大学で勉強し、夜アルバイトで生活費を稼いでいるのだそうですが、皆さん実に真面目で働き者です。こういった人達が祖国に帰り、近い将来、朝鮮半島の平和と発展に貢献していくのだなと想うと、私も頑張らねばと勢いがついてくるのです。
最近、コリアの方々に限らず、多くのアジア人が、日本に移り住んできています。私はアジアが大好きで、仕事でもプライベートでもよく旅をするのですが、旅先で友人が増えるにしたがい、それぞれの国の状況が見えてくるにしたがい、よく言われる「アジアはひとつ」という言葉は間違いであると思うようになりました。国あるいは民族、言葉、宗教、政治、経済、歴史、習慣などの違いの数だけ、アジアの中には違いが存在するのです。過去の不幸な紛争はおしなべて、片方から他方への論理の押し付けが原因であることは、歴史が教えてくれています。大切なのは、お互いの違いを認識し尊重し合いながら、将来に向け一緒に成長していくために、何か共有できるヴィジョンを持つことなのだということをアジア各国の友人たちとの付き合いから学びました。
その共有できるヴィジョンですが、現時点では経済的な側面での動きが活発な様に思えます。アジアのすべての国の人々が、豊かな暮らしが出来るようにするためのヴィジョンを打ち立て、推進していくことは、火急を要することです。そして、紛争の只中にいる人々のためには、政治的な解決が速やかに行われるよう、切に折っています。
万国共通語の「マンガ」を通じて、世界平和の実現を私は政治や経済の専門家ではないので、こういった分野での働きは出来ません。しかし、私がこれまで培ってきたもの「マンガ」というメディアを通してなら、その「共有できるヴィジョン」のために、何か出来るのではと考えています。
現在の日本のストーリー・マンガというものは、手塚治虫先生によって考案された、文化的には比較的新しい表現形態です。マンガというものは、絵でメッセージのほとんどを表現することが出来るので言葉の壁を越え、世界中の人々に愛される素晴らしいメディアであると自負しています。
私が描いたマンガの作品は、アメリカ、ヨーロッパ各国、台湾、香港など、多くの国々で読まれています。きちんとその国の言葉に翻訳され出版されたものもありますが、日本語の本もそのまま出回っています。外国人のファンの話では、絵を見ればストーリーが分かるから大丈夫なのだそうです。
外国でも、格好良いヒーローには憧れ、滑格なキャラクターには大笑いしてくれます。
マンガは万国共通語なのかもしれません。鄭さんは「ワンコリア」実現のためにこれまで、ロック・コンサートやイラスト展など、数々の文化的な催しをされてきたと伺いました。私も、マンガという手段で、ワンコリアフェステイバルに参加させてもらい、アジアの、そして世界平和の実現の一端を担えれば、こんなに嬉しいことはありません。
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永井豪(ながい・ごう)
1945年生。都立板橋高校卒業後、石ノ森章太郎のアシスタントを経て、67年「目明かしポリ吉」でデビュー。
68年「ハレンチ学園」を『少年ジャンプ』に連載し、当時の児童漫画を越えた性描写ときわどいギャグが物議をかもした(ちなみに今年「平成ハレンチ学園」を発表)。以後、情念とギャグを柱とした独特のSF漫画の世界を創り上げ、人気作家として不動の地位を築く。
代表作として「デビルマン」「マジンガーZ」「バイオレンスジャック」「凄ノ王伝説」「あぱしりー家」「キューティーハニー」など。アニメ化、写実化されたヒット作も多い。80年「凄ノ王伝説」で第4回講談社漫画賞を受賞。..............................................................................
(※すべて1994年現在です。)〜〜〜〜〜〜〜〜
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