ワンコリア・トーク 俵万智 & 鷺沢萠 & 金久美子 ”コリアの新い魅力、見つけた。”      -- 4/5ページ
 

 

 

私たちの世代だからできることがある

金★★今の日本って、在日朝鮮人だけではなくて今や様々な国の人が入ってきてますでしょう。普通だったら海外旅行に行かなくては分からないようなことが、電車で隣に座っている人に話しかけて友達になっただけで、いろいろなことを知ることができたりする。そうやってお互いに違いを面白がることが楽しいと思いますね。たとえばこういうワンコリアフェスティバルみたいなことも、ずっと続けていって自分たちの問題を突き詰めていくと、それがアジアとか
世界につながり広がっていくような気がします。ちょっと前に国際化とか言われて、私も在日関係の取材が何かと多いんですよ。でも、もっと今の日本には面白いことっていっぱいあるし、もっといろいろなところで意見を聞いて面白がっていく方がいいんじゃないかな。
鷺沢★日本人が陥りがちなところとして、「似ているんだし、兄弟みたいなんだから仲良くやろうぜ」みたいなの、ありますよね。でも、それはちょっと違うと私は思っています。だって違うところは確実に違うし、在日同胞がみんな日本に同化することなんて望んでいないんだから。だから「日本人と同じなんだよな」とか言われて、肩をボンとか叩かれても、待ってくれと言いたくなる。違うところは違うと分かって欲しいですね。
俵★★なんか、極端になってしまうんですよね。一緒だァって言うか、離れてしまうか。いろいろな国の人と出会う時って、最初からその国にすごく興味を持っている場合もあれば、持っていない場合もあるし、その国を好きだと思うところと、全然違うなと思うところもある。他の国ではそれが自然に表現できるのだから、コリアに関してもそれをもっと自然に表現できたらいいなぁと思いますね。
鷺沢★極端な民族主義というのは、危険ですよね。でもやっぱり民族への思いというのは誰でもある。そこに帰るとホッとするとか、ホコッと気持ちが暖かくなると言った意味では、民族というのを私は肯定します。肯定する、という言い方は奇妙かも知れないけれど、今まで世界で起こってきた戦争って、つきつめでいけばみんな民族が原因だから。でも、だからといって否定できないものがある。民族というのは、一番小さい単位で言うと家族だったりするじゃないですか。民族への思いというのは、自分のお父さんを愛しいと思う気持ちと同じですよね。
金★★『月はどっちに出ている』の中で、「忠さんは好きだけど、朝鮮人は嫌い」て台詞があるでしょ。その言葉の持っている裏腹さも含めて、あの台詞に尽きるなって気がしますね。
俵★★私もその台詞は、とても印象に残りました。見る前から、そういう台詞があるということは聞いていたんです。それで、なんだか陰惨な場面でそういう台詞が吐かれるのかなと思っていたら、そうじゃなくて、むしろ日常的な場面の中でポンと発せられている。そういう描き方がいいなと思ったし、同時に根が深い問題だとも思いました。具体的な人と人が出会ったら、好きという感情が生まれるのに、その背景にある民族という顔もないものに対して「嫌い」といというのはどういうことなのか。忠さんは好きだけど朝鮮人は嫌いって、でも忠さんは朝鮮人に含まれてるわけですよね。そういう言葉の矛盾というものが突きつけられてくるし、具体的に顔は見えないい集団に対してある感情を抱くということのへンさということを、ものすごく感じました。
金★★韓国に行っても同じですよ。仕事の現場とか、多分学校にいても、あなたは好きだけど日本人は嫌いって感情がありますよね。お互いにそういう風に向きあってしまってる。若い人もそういう教育をうけているわけですから、すごく日本に憧れる部分がある反面、深いところでイヤだって思いがある。
鷺沢★日本人は好きだけど日本は嫌い、って言う人もいる。
俵★★「あなたのこと好きだから日本が好き」って言ってもらえると、一番いいですよね。たとえば外国に旅行して、それまで全然興味がなかったけれど、たまたまデンマークに行ってデンマークで友達ができて、帰ってからデンマークのことがニュースで映っていたら以前とは違う興味を持って見る、みたいな。人と人の出会いから始まって、あの人がいるから、友達がいるから、その国が好き……というのが、本当は自然なんじゃないかと思います。
鷺沢★日本でお酒の席とかで、韓国人の悪口になったりすることってあるじゃないですか。そういう時、しようがないから私も聞いているんですよ。ハッとみんなが私に気がついて、「あんたのことじゃないんだよ」とか。そういう経験って、僑胞だったら誰でもしているんじゃないかな。
金★★でもその時って、国籍は日本じゃないですか。それで血は4分の1でしょ。日本人の血の方が濃いよね。しかも20歳までは日本人として生きてきた。じゃあ、自分の中で、自分は僑胞だって選びとったのかしら?
鷺沢★まわりが日本人だけになると、僑胞の立場でものを言えるのは私だけ、と思っちゃう。でもやっぱり4分の1でしかないとも思っている。
金★★じゃあ、どっちの立場でもいられるんだ。
鷺沢★そうかもしれない。
俵★★その場にいる日本人のみんなは、その4分の1に対してド−ッと遠慮するって雰囲気でしょ。なんか分かるような気がする。
金★★でも在日というのは、いろいろなものの「間」にいて、本国でできないことができたり、ここだからワンコリアフェスティバルみたいなこともできるし、いろいろな人とかかわっていけるところがありますよね。そのもっと「間」にいるのが鷺沢さんかもしれない。
鷺沢★でも留学していた時には、ある不安定さがあったんです。学校でもなんとなく日本人は日本人どうし、僑胞は僑胞どうしでグループになる傾向があって、私はずっと僑胞グループにいたんです。それでハッと気づくと、あっ、私だけ違うんだって。それは私が初めて経験する感覚だったんです。たぶんこれが、僑飽が日本で感じている感覚に近いのかもしれないなと思いました。その感覚を味わえただけでも、行ってよかったなと思っています。
俵★★鷺沢さんは20歳までおばあちゃんのことを知らなくて、知った段階で、そうだったんだふーんで終わってしまうこともできたわけですよね。それが、飛び込んでいったのはどうしてなんでしょう。
鷺沢★祖母方の同じ代の従兄弟って、自分を入れて6人いるんですけど、私が一番年下なんです。あとはみんな結婚したりしているし、とても韓国語を勉強したりする余裕はない。私がやらなければ終わっちゃうかな、って思いはありました。
俵★★飛び込んでみたら、思っていた以上にいろいろな広がりがあったんですね。
鷺沢★そうですね。その時点で、日本人がことコリアに関しては「ヤバそう」って思っている部分にも気づきましたし。興味がないと、見落としてしまうことって多いですよね。
俵★★興味がないと、アンテナに引っかからないんですよね。何も知らないで日常生活を過ごしていても、別に不都合なことはない。でも、鷺沢さんはハタからはのめりこんでいるように見えて、そういうのを見ていると、私も何も知らないでポーッとしてていいのかなって感じました。本の中に、普段何もかかわっていない日本人の子にも知ってほしいことがたくさんあるって書いていらっしゃいましたよね。あのことが、私にとってはまた新しい一つの窓だった。ある枠組みの中だけで循環していると解決しない問題って、きっといっぱいあるんだという気がします。
鷺沢★在日同胞だけで固まることがよくありますけれど、どこか風穴が開いてほしいですね。そこから自由に出入りできるような。
金★★私たちの世代だから出来るということも、たくさんあると思います。たとえば、みんな鷺沢さん化したらいいんじゃないですか?だってたまたま鷺沢さんは4分の1だけど、20分の1だかなんだか、どこかで血なんて混じっているわけでしょう。だったらみんなそれなりに、自分の立場を面白がれる生き方をしたら楽しいのに。
鷺沢★私みたいに何も分からない人間でも、ここまで来れる、みたいなところもあるし。そういえば日本人って、ベタベタするのはよくないことだって風潮があるじゃないですか。あまり他人に深入りせずに、一晩飲んでも次の日はサラッと別れるみたいな。でも私って、それができないんです。すごく人のことをかまいたいし、かまってもらいたい。でもそれはやっちゃいけないことなんだって、子供の頃から自分を戒めて、人に執着を持つのはよそうと、自分を押さえて生きてきたんです。それが韓国に行ったら、やっていいことになっちゃって。それがとても嬉しかった。
金★★私は向こうで仕事をするようになって、物事をハッキリ言うようになりました。それまではなんだかフワーッとしていて、よく分からないな、みたいな感じだったんですけど、向こうではハッキリ物を言わないとやっていけませんから。それが身についたんですね。
俵★★鷺沢さんを見ていると、どちらかがふるさとというより、二つふるさとがあるって感じがする。
鷺沢☆私にとってはやっぱり韓国は、祖国ではないんです。でも行くたぴに、ソウルが近づくとウキウキする。他のどの国にも感じられない感覚ですね。
――★そういえば金さんは、明日から韓国へ…。
金★★8月15日に放映するテレビドラマの女性主人公ということで呼ばれているんですけど、まだ台本も貰っていない(笑)。もうロケが始まっているのに、ただ釜山に来なさいというだけでホテルも分からない。この向こうのノリが凄い(会場爆笑)。私は日本人の役で、戦前に朝鮮の青年と恋に落ちるんですが、終戦で日本に帰って日本人と結婚する。その娘が釜山に旅行に行った時に、かつての母の恋人と逢う、という話です。その回想シーンが、ドラマになっていくという設定です。
――★8月15日といえば光復節でしょう。そういう日のドラマとして日本人とのラブ・ロマンスを放映するというのは、ずいぶん韓国も変わりましたね。
金★★そうなんです。向こうのドラマや映画に出てくる日本人といえば、必ずチョピ髭に丸眼鏡の悪役でしょう。だいぶ時代が動きつつあるな、と思いますね。
鷺沢★いい方向に向かっているって感じ、ありますよね。そう思いたいし。



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