中村敦夫(なかむら・あつお)
1940年、東京生まれ。
東京外国語大学中退後、俳優座養成所を経て63年俳優座入団。
65年ハワイ大学奨学生留学、71年に俳優座を退団した後、テレビ界に進出。
72年「木枯し紋次郎」のブームが起きる。
83年、小説『チェンマィの首』を発表、文筆活動を始める。
84年、テレビの情報番組「地球発22時」のキャスターに。
95年、月刊『中村敦夫新聞』発刊。
96年『時よ、怒れ!』を上梓するなど、活発な言論活動を行っている。 |
内外タイムスに中村敦夫さんが連載されている、『紋次郎/政界を斬る』。中村氏がその紙面上で展開する在日外国人の人権問題に対する考えを、中村氏のご意向によりメッセージとしてここにご紹介します。
いま、国会の法務委員会には大変重要な法案が2つかかっています。1つは「外国人登録法の一部改正案」です。これによって指紋押捺制度が廃止されます。それは被害者や人権活動家たちの長い間の運動によってようやく前進したもので、その意味は大変大きいんです。
ところが、もう一つ「外国人登録証」というのがあるんです。日本人でいえば住民登録台帳にあたるものなんですが、これの「常時携帯義務」というのが法律の中に残ってしまった。朝から晩までいつも持っていなければならないというのですから、不自由で仕方ない。持ってないと罰金(刑事罰)を科せられる。これはその立場になってみなければわからないプレッシャーですよ。
なぜ「外国人登録証」を常に携帯しなければならないのか。それに対する法務省の答えは、捜査で犯人を特定するときに非常に利便性があるからだという。
だけど捜査なんて異例なことです。(中略)実は1992年に衆参法務委員会で、この常時携帯を見直すという決議がなされているんです。それにもかかわらず7年間も放置されている。国会軽視もはなはだしい。
もう一つの法案は「出入国管理及び難民認定法の一部改正案」です。これで新たに「不法滞在罪」というのをつくった。これは難民申請者たちに乱用される恐れがあります。
また、強制退去の前歴がある人はいままで1年間入国できなかったのを5年に延ばすという。悪質なやつらは偽造パスポートがあるから関係ない。一番犠牲になるのは普通の人たちです。
98年の長野オリンピックのとき、建設労働者としてたくさんの不法在留外国人を使った。そころが建設が終わった途端に、全員逮捕して強制送還した。それは「ホワイトスノー作戦」といわれた。道徳的にすごく卑劣な行為ですね。これが入管行政なんです。(中略)人権の観念というのは21世紀になるとどんどん進化し、拡大するものです。こんな法律を残していたら、日本はその進化に対応できません。人権というのは、相手の身になるということなんです。相手の身になってものを考えない限りわからない。殴ったやつじゃそれを忘れてしまうが殴られたやつは忘れない。そういう人間関係の基本をちゃんとしないで殴る側だけの理論でいくと日本人はますます国際的に孤立するでしょう。
(内外タイムス/平成11年4月27日発行より転載)