在外コリアンが、まず
ひとつに

田月仙(ちょん・うぉるそん)

 

 私は大阪での第一回ワンコリアフェスティバルから参加していますが、その年、ユニバーシアードを南北統一旗で応援するという話を聞き、感慨深かったことを覚えています。

 スポーツは勝敗を争うのが宿命。でも、85年のサッカーの南北戦のとき、母は「可愛そうで見ていられない。一つのナショナルチームとして、他国と戦うのが本当なのに」と言いました。私自身、北朝鮮が勝って喜ぶ同胞達を見て、これが現実なのかと複雑な気持ちになりました。ですから卓球のワンコリアチームが実現した時は、本当に嬉しくなりました。ワンコリアフェスティバルに参加したのも、音楽を通して統一への思いを伝えるという趣旨に賛同したからです。

 私は85年、北朝鮮の平壌で開かれた「世界音楽祭」に招かれました。また95年にはソウル定都600年を記念して「芸術の殿堂オペラハウス」で上演された「カルメン」の主役を演じています。北と南の両方を訪れるのが難しい状況の中で、南北の大きなイベントに参加し、歌うことができたのは、大きな経験だと思います。でもやはり、早く統一した祖国で歌いたい。それが私の夢です。

 そうした想いで歌う中で出会った歌が、今はアメリカに住むコリアンによって作られた「高麗山河わが愛」です。

南であれ北であれ
いずこに住もうと皆同じ
愛する兄弟ではないか
(中略)
山も高く 水も清い
美しい高麗山河 わが愛
わが愛よ

 分断のせいで我々は、あまりにも苦労し、傷ついてきました。そんな先輩達の苦悩や葛藤を見、南北両方の祖国の地を踏んだ私の心に、その歌詞はストンと落ちました。海外に散らばっているコリアンもひとつとなって、祖国統一のために力をあわせねば。この歌を歌うにつれ、その想いが深まります。ワンコリアフェスティバルへの参加も、そのひとつ。日本にいるコリアンが中心になり、これだけ多くの人が集まって、同じ想いでこの場を共有できるのは、本当に素晴らしいことです。

 また「高麗山河わが愛」のドキュメンタリーが韓国で放映されたことで、在日コリアンの存在や想いを韓国の人々にアピールできたのも大きな喜びです。今では韓国のテレビに出る機会があるたびに、この曲を歌って欲しいと要請されるようになりました。

 在外コリアンにとって統一は悲願。ワンコリアフェスティバルを通して、そのことを日本にいる人や南北の祖国だけではなく、世界にアピールできればと願っています。

(1997)


田月仙(ちょん・うぉるそん)
オペラ歌手。2期会会員。桐朋学園芸術科研究科卒業後、東京での連続リサイタルで楽壇にデビュー。以後「フィガロの結婚」「蝶々婦人」「サロメ」など、次々と主役を演じる。その後、南北両方の祖国での公演を実現。96年のロスアンゼルス公演の模様は、日韓両国でテレビ番組として放映された。昨年(1996年)大晦日には、韓国版紅白歌合戦ともいえる人気番組に日本から初めて出演。10月13日(1997)には、現代音楽化の三宅?名を迎えて「チョン・ウォルソン・リサイタル 薔薇物語」を開く。


©1985-2001 OneKoreaFestival. tel,fax/06-6717-6645 mail :Webmaster