人気ブルースバンド・憂歌団のボーカルをつとめる木村充揮こと朴秀勝氏は、常連ミュージシャンのひとりである。
彼が本名宣言をしたのも実は、ワンコリアフェスティバルのステージだった。彼のワンコリアへの率直な想いを、その独特の口調で語ってもらった。〜〜
ワンコリアフェスティバルにはいつも楽しく参加させていただいてますわ。僕も生野区出身やしね。
僕のワンコリアフェスティバル感?なんや唐突な質問ですなぁ。う−ん…。在ることが嬉しくて無いことが淋しい。それを知ってるからこそ、無かったら在ることを創ろうとする。そのパワー、それがええんやないかな。ちょっと哲学的になってもうたけど。
せやけどね、「ワンコリア」をそのまま「統一」と訳すとするとね、僕は今、何が何でも「統一」してほしいと考えているわけやないんですよ。ホンマ言うと。別に一国が一つになるということやなくて、北と南がそのまま残ってもいいと思てます。要するに、互いに人が自由に行き来できるとか、まともな国交が実現すればそれでいいと思てるんです。それが、僕の考える「ワンコリア」ゆうことなんやね。
●外に出たから感じること、
●ありますねん。それはそうとね、実行委員長の鄭さん、あの人、日本を出てほかの一国にいったことないってきいたけれどホンマですか?あの人のことやから、まず祖一国南北に行ってから、というこだわりがあるんやろうけどね。そういう気持ちもわかりますけど、鄭さんみたいに「ワンアジア」「ワンワールド」を目指してる人は、やっぱり外に行かなあきまへんて。ナマイキなこと言うようやけど、いろんな一国へ行ってそこで人が生活してるとこを見たら、きっと何か感ずるところあるはずです。僕なんかでも、チェジュド(済州島)やソウルにいったとき、むかしオヤジが住んでた家を見て、何となく、胸ん中に感じるもんあったからねぇ…。
それからニューヨークに行った時もいろいろ感じるところがありました。あそこは大都会やけど、同じ大都会やと言うても東京とは全然違います。何かゆったりとしてるところがあって、あの街には小さな枠の中にはめこまれないいろんな人がいてる。向こうに住んでいるコリアンの友達がこう言うてたんですわ。「ここで何か創ろうとしてるのが、ニューヨークっ子や。だから、そうする人間は誰でも認めてもらえる」。こういうの、ええよね。僕はニューヨークのこういうとこが好きやし、ハーレムなんか雰囲気が大阪の生野や西成に似たところありますよね。そういうのって、一回出て、肌で感じへんと、わからんのやね。
●ワンコリアは大阪で、ワンアジア・
●ワンワールドは世界の国々で大阪の街ってのは、きたなくて、臭くて、ゴチャゴチャしてて、でもその中で、みんな何か一生懸命、呑んで食べて頑張るって感じしますよね。
話し変わるけど、ワンコリアで本名宣言のこと、あれはそない「ゆうてやるぞ」みたいな気持ちはなかったんですわ。憂歌団では木村充挿でやってきたし、物心ついた時から木村秀勝やったし、もう片方で朴秀勝というのがあり、読み方も日本読みがあれば、カタカナでパク・ススンと書かれたり、そういうのって、僕自身もって生まれた、ごくフツウのことなんやね。そやから「パク・ススン」って言った訳です。そういうの、自然なことなんやろうなぁ、と思った。言ってみれば生まれた時から在日はインターナショナルなところに生まれてきたみたいな、そんな気持ちなんやね。世界の日本という大阪の街、大阪の生野区みたいなところに生まれて、自分は何をやって、どんな風に楽しく暮らしていけるかなぁ、という感じですね。
ついでにゆうたら、ワンコリア、今年は東京でもやるでしょ。それはそれでええと思うけど、でもワンコリアはやっぱり大阪でやったらええんとちゃいますか。在日も多いし、ワンコリアは大阪が似合いますわ。あちこちでやらんと、東京や九州からわざわざ大阪へ見に来るほどのええもんにしたらよろしいがな。最近、憂歌団とは別にソロで活動する場合が増えたし、韓国へ行ってソウルで歌えへんかとか、いろんな人からいろんな誘いを受けます。僕はね、ホンマの話あちこちに行きたいんです。狭い日本に閉じこもってしまうんやなくて、モスクワでもニューヨークでもどこへでも行って、ワンアジア・ワンワールドの気持ちで、いろんなことをやってみたいんですわ。
ワンコリアだけにとどまるんやなくて、ワンアジアとかワンワールドとか、こんなこと思てるヤツが日本にもいてるんやで、というラブコールをきちんとやりましょ。そういうのが実現するときは、一緒にやりましょうな。傍らはインターナショナルや。鄭さん、ワンコリアフェスティバルの皆さん、ワンコリアのためだけやのうて、ワンアジア・ワンワールドのためにこれからも働いてください。
(1994)
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朴秀勝(ぱく・すすん)
木村充挿(きむら・あつき)の名でブルースバンド「憂歌団」のボーカルをつとめる。
独特のアクション&口調を交えた音楽は、書から根強いファンをつかんでいる。
CMソングなどの担当も多く、身近なところでラジオCM「紀陽銀行」「パンシロンG」などがある。
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