世界は一つ、
人間は皆一緒。

矢崎友英

地球が不治の病にかかっていることは、ちょっとものの見える人なら知っている。

高度な文明の発達によって、資源は乱開発され、自然環境の破壊が大規模に行われてきた。気象状態も異常で、集中豪雨、豪雪、突風、竜巻、旱魃、渇水、落差の激しい気温などが、世界各地で見られる。こうした天変地異の影響をもっとも受けやすいのは、第三世界の国々である。

すでに、広い範囲で災害による被害が発生しており、地域的な飢餓が起こっている。しかも、戦争や核の恐怖が、依然として重くのしかかっている。人類ははっきり言って、かなり以前から、重大な危機に直面しているのだ。

あらゆることは、ケチな根性から起こっていると思う。偏見や差別の根源にあるものは、嫉妬とか高慢とかの感情によって作り出されたものだ。金持ち達は拝金主義に凝り固まり、見える慈善に限っては援助を惜しまないが、救いの手を差し伸べている真剣な人々を平然と見殺しにしている。目に余る奢り高ぶりを恥じない特権階級意識の蔓延。先進諸国の堕落した権力者たち。本当に大切なものをすっかり見失っている。多くの身勝手な裕福な人々。危機を増殖しているのは、私たちのごく身近にいる偽善者の群れなのかも知れない。まさに、地獄への道は見せかけの善意によって敷きつめられているのだ。

朝鮮半島だって、アメリカ、中国、ロシア、その他のあらゆる地域や国家、そして日本だって、地坪の一部に過ぎない。同じ人間が住んでいるごく普通の地上である。南だ北だと争うことなど、本来は滑稽なだけなのだ。地球で生まれたあらゆる人間は、皆一緒だと思う。小さな幸せがあればいい。平和な暮らしが出来ればいい。それだけのことなのに、誰かが邪魔をする。自分だけは得したいという、そんな欲望を持った誰かが、ささやかな望みを片っ端から破壊する。

ケチな気持ちを捨てよう。徹底的に助け合おう。誰にだって、一生はただ一度。
皆ちょぽちょぽなのだから、偉そうな事なんて言わないで、思いっきり優しく生きよう。弱者を救済するのは、当然なことだ。分かちあい、尽くしあい、励ましあって、それをごく普通に、自然のこととして皆で享受しよう。

ワンコリアなんて言わなくてもいい時代になるために、あえてワンコリアにこだわってみようではないか。

(1994)


 

矢崎友英 (やざき・ゆうえい) 矢崎秦久より改名。
1933年生まれ。ジャーナリスト。
早稲田大学政治学部中退後、『内外タイムス』の記者を経て、
65年『話の特集』を創刊。
テレビ番組のプロデュース、舞台演出等各種イベントも多数手掛けた。
74年日本ジャーナリストクラブを組織。
77年中山千夏、ばばこういちらと革新自由連合を結成。
現在、話の特集オーナー兼編集長。
著書に『湿った火薬』『精力舌論』『バラの花など唇に』(以上、共著)、
『青空が見えたこともあった』『情況のなかへ』『あいつの麻雀』『編集後記』等がある。

 

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